外国人が日本の不動産を購入するためには

低金利政策や円安の影響で、日本国内に居住する外国人をはじめ、海外に住む投資家の外国人も日本の不動産に注目し、購入する人が増えています。この流れは、日本の不動産市場にとって大きな影響を与えています。

外国人による日本の不動産取得に対して、法律上制限はありません。国によって国際取引に関する法律は異なります。

日本では「外国人土地法」と「外国政府の不動産に関する権利の取得に関する政令」で制限がありますが、ほとんどの国(178か国)はこの適用から除外されるため、問題なく日本の不動産を取得することが可能です。

購入までの流れ

売買交渉 → 売主による本人確認*1 → 契約・決済 → 所有権移転登記*2 → (必要に応じて財務大臣に届出*3

外国人が日本の不動産を購入する流れは、物件の下見、買付け証明書の提出、支払いについての確認、重要事項の説明、売買契約書の締結、支払金の用意、決済・登記、必要に応じて財務大臣への報告の順に進められます。

購入の際にはいくつかの必要な書類があり、日本国内に居住している場合と、海外に居住している場合で必要な書類が異なりますので注意が必要です。

*1【売主による本人確認】

不動産取引において、仲介業者は売買当事者の本人確認と意思確認をすることが義務付けられています。

本人確認とは、売主あるいは買主が当事者本人かどうかを確認する作業です。個人の場合には運転免許証などの公的な身分証明書、法人の場合には、法人の登記事項証明書・印鑑証明書のほか、代表者または取引担当者の本人確認をおこないます。

本人確認については、国籍問わず「顔写真付きの証明書」が必要になります。

外国人の場合、居住者であれば「在留カード」や「特別永住者カード」、非居住者であればパスポートの提示が必要になります。

*2【登記必要書類について】

外国人が買主となる場合に、登記手続きで必要となる書類は日本在住か海外在住か、また融資を受けるか受けないかで大きく異なります。

買主が日本在住の場合

現金購入の場合  
住民票・印鑑(またはサイン)

融資を受ける場合 
住民票・印鑑(実印)・印鑑証明書
海外在住の場合

宣誓供述書・印鑑(またはサイン)
※海外在住の方の場合、日本で融資を受けられるケースはほとんどないため、現金購入と同じとします。

日本人の場合には住民票や印鑑証明が必要となりますが、このような書類を保管する制度は海外の国では無い場合が多く、外国人が代わりに使える書類が宣誓供述書サイン証明書です。

日本で住民登録されている外国人(中・長期在留者や特別永住者)は「外国人住民に係る住民票の写し」を役場で取得することができます。住民登録されていない場合、「宣誓供述書」の取得が必要になります。

宣誓供述書は、本人の特定並びに住所・氏名・生年月日・性別を記載した書面にその国所属の公証人による認証がされている旨が記載された公文書です。宣誓供述書は国籍国の公証人の認証によるものと在日大使館領事部で認証されたものどちらでもかまいません。国によって発行場所が異なるため、事前の問い合わせが必要です。

日本で住民登録されている外国人は日本人と同じもの入手できます。事前に実印を作成して印鑑登録をしておく必要があります。住民登録されてない場合は「サイン証明書」が必要になります。

サイン証明書は、特定の機関が署名の真正性を証明するための証明書です。国籍国の在日大使館・在日国籍国領事館で作成され、在日国籍国領事館がサイン証明書の交付に対応できない場合には、日本の公証人が作成したものも使用可能です。
外国法人で購入する場合

外国法人は本国所在地とは別に、日本における営業所(支店)を登記することができます。登記をした会社は日本の法人と同様に会社法人番号も発行されますし、印鑑登録もできます。したがって、不動産売買をした場合には基本的に日本の法人と同じように登記手続きをすることができます。日本国内に営業所がない場合は、個人購入と同様に宣誓供述書やサイン証明書が必要となります。

日本国内に営業所を置いている場合
会社登記簿謄本・資格証明書・代表者の身分証明書(パスポート等)

日本国内に営業所を置いていない場合
法人情報に関する宣誓供述書・代表者の身分証明書・印鑑(またはサイン)

*3【財務大臣への届出義務について】

買主が日本に住んでいない非居住者の場合、「外国為替及び外国貿易法(外為法)」で届出義務が生じます。

報告の際は、日本銀行が配布する「外為法等55条の3に係るもの」の書面を用いて、日本銀行を通じて財務大臣宛に行います。不動産取得から20日以内に行う必要があるので、事前に準備しておきましょう。

届出が不要なケース

 入国から6か月以上経過している場合

 国内の事務所に勤務している場合

 ほかの非居住者から不動産を取得した場合

 非居住者の本人の事務所用として取得した場合

 非居住者・その親族・使用人やその他従業員の居住目的で取得した場合

 国内で非営利目的の業務を行う非居住者が、この業務を遂行するために獲得した場合

外国人が不動産を購入する場合、登記や届出などで書類の用意が必要になります。国によって発行場所が異なる場合や、書類の取得までに1か月前後時間がかかる場合もありますので、早めの相談・ご準備をお勧めします。

【日本における在留資格について】

在留資格とは

在留資格とは、外国人が日本に入国して在留することを認める資格です。日本国内にいる外国人は、必ず何らかの在留資格を持っています。在留資格を持たない外国人は「不法滞在」となってしまいます。一人につき一つの在留資格が認められていて、一人で2つ以上の在留資格を持っている人はいません。

3か月以上の中長期滞在者に対しては「在留カード」が発行され、常時携帯する義務があります。観光などで日本を訪れる場合には、3か月以内の短期滞在に該当するため在留カードは発行されません。

永住権

外国人が在留期間を制限されることなく滞在国に永住できる権利のことです。出入国管理及び難民認定法第22条では「永住許可」と呼ばれ、法務大臣が与える許可を指します。在留資格を持っている外国人が永住者への在留資格の変更を希望する場合には、入国管理局に対して永住許可申請を行います。滞在国で永住権を持つ外国人や永住許可を受けた外国人は永住者と呼ばれます。

永住者の権利はその国の国民と全く同じというわけではなく、ある程度の制限があります。制限内容は選挙権、被選挙権、軍・警察・役所などの公的機関への就職、土地の所有、パスポートの取得などにおいて一定の制限を受け、再入国許可を取得しないまま1年を超えて日本を離れたような場合には、永住許可を取り消されることがあります。

永住者

永住権を持つ外国人のことで、母国の国籍を持ちながら半永久的に日本に住むことができます。在留資格「永住者」在留カードの交付がされます。

あくまでも外国人であるため、母国への帰国はスムーズに行うことができますが、再入国の際には手続きが必要になります。永住者の場合、基本的にどこにでも就職することができますが、公的機関や政治家などへの就職は制限されています。また、参政権もありません。

特別永住者

1991/11/1に施行された入管特例法に定められた在留資格を持っている外国人のことで、第二次世界大戦以前に占領していた朝鮮半島や台湾などがサンフランシスコ平和条約によって、領土ではなくなったことにより、日本国籍を失った人々とその子孫に対して永住を許可したものです。在留カードの交付はなく、特別永住者証明書が交付されます。

帰化

外国人が日本国籍を取得することを指します。

法務局に申請を行い、半年から1年程度の審査期間を経て獲得することができます。外国籍ではなくなり日本人になるので、日本の名前・戸籍を持つことができるようになります。また、在留資格制度からは外れるためビザの更新や届出などの各種手続きから解放されます。年金制度、国民健康保険への加入が可能になり、社会保障なども日本人と同じように受けられますし、参政権も得られます。就労についても制限がなく、どんな仕事にも就くことが可能です。帰化することで銀行との取引もスムーズになり、融資を受けることや、ローンを組むことも容易になります。

国によっては複数の国籍を持つこともできますが、日本では国籍は一つしか認められていないため、日本に帰化したら今持っている国籍を放棄することになります。

帰化の条件には、日本に引き続き5年以上住んでいること、経済的に安定な生活を営めること、素行が善良であることなどが求められます。

簡易(特別)帰化

日本人の配偶者や子供等、一定の条件を満たす場合、帰化申請の要件が緩和されることがあります。これを簡易帰化、あるいは特別帰化と言います。日本で生まれて3年以上日本に住んでいる場合や、日本人の配偶者と結婚して3年以上経過し、引き続き1年以上日本に住んでいる場合には、引き続き5年以上住んでいなくても帰化申請が可能となります。

各種ビザについて

ビザ「技術・人文知識・国際業務」

日本の公私の機関との契約に基づいて理学、工学、法律学、経済学、社会学などの自然科学や人文科学の分野に関連する技術や知識を必要とする業務、または外国の文化に基盤を有する思考や感受性を必要とする業務に従事する外国人の在留資格です。

該当する職種には機械工学者、通訳、デザイナー、私企業の語学教師、マーケティング業務従事者などが含まれます。

ビザ「技能」

特定の専門技能を必要とする業務に従事する外国人の在留資格であり、料理、建築、製造や修理などの特殊な分野において働くためのビザです。

ビザ「家族滞在」

教授、芸術、宗教、報道、高度専門職、経営・管理、法律・会計業務、医療、研究、教育、技術・人文知識・国際業務、企業内転勤、介護、興行、技能、特定技能2号、文化活動、留学の在留資格を持つ外国人の配偶者や子供が日本で日常的な活動を行うための在留資格です。

ビザ「留学」

日本の大学や専修学校、または高等専門学校などで教育を受けるために日本に留学する外国人の在留資格です。留学ビザは、日本の大学に入学するための教育を行う機関や12年の学校教育を修了した者が外国で専門課程や教育を受ける活動に関連します。

外国人の会社経営とビザについて

外国人が「技術・人文知識・国際業務」「技能」「家族滞在」「留学」といった在留資格を取得している場合は日本国内での活動が制限されるため、自由に会社を設立することはできません。入国管理局で「経営・管理」ビザへの変更を申請する必要があります。

例えば「技能」のビザを取得している外国人が、これまでそのビザを使って技術を磨いていたとしても、自分で会社を設立してお店を経営したい場合は、在留資格を「技能」から「経営・管理」ビザに変更して、経営者として活動できるようにしなければなりません。

日本で会社を経営するために必要な経営・管理ビザを取得するには、以下の3つの条件があります。

日本人は資本金が1円でも会社を設立できますが、外国人の場合は2名以上の常勤社員を雇用する場合、または資本金が500万円以上必要です。

以上のことを理解しておくことが、外国人が日本で会社を設立するための第一歩となるでしょう。本記事が今後の不動産購入や会社経営の一助となれば幸いです。

執筆   斉藤 舞

 

TOEMが選ばれる理由   投資不動産
BL事業部   デザイン・内装
賃貸管理   会社概要
コラム・特集   求人情報
会員様向け   お問い合わせ
メディア関係者様    
御来社
予約
ページ
最上部へ
TOP
PAGE